【風景のロングパス_12】風景のロングパス

sun-kyoプロジェクト・設計チームの趙 海光さんによるエッセイを、全12回に渡ってお届けします。
タイトルである“風景のロングパス”には「遠い先の誰かに、この風景をロングパスしよう」というこのプロジェクトへの想いが込められています。
風景のロングパス
そうそう、そういえばもう⼀つ、「ローカルな応答」 がもたらしたものがありました。4軒の家を、それぞれの家が建つ場所に⽣えた樹⽊の名前で呼ぶようになったのです。それまでは住居AとかBとかアルファベットで呼んでいたのですけれど、それぞれの場所に残った⽊々がじつに個性的なので、その名前を借りることにしたわけです。奥から順に「クロガネモチの家」と「イヌシデの家」、そして道路側に「タイサンボクの家」と「エノキの家」。⼯事もこの順番で進めていくことになりました。
現場での位置決めの後、すぐに基礎⼯事が始まり、最初の⼀棟(クロガネモチの家)が上棟したところで年が明けました。現在2025年2⽉。現場は雪に覆われて、⼆棟⽬の「イヌシデの家」の基礎の上に雪が積もっています。
「タイサンボクの家」と「エノキの家」の建つあたりはまだ平坦なまま真っ⽩。本当に綺麗です。

⾵景って、誰のものなんでしょうね?
つくろうと思ってつくれるものじゃないのが⾵景ですけれど、でも参加はできます。
屋敷林というかたちで、過去の⾒知らぬ誰かからパスされた⾵景に、私たちはほんの少しだけ⼿を加えました。
そしてこの美しい⾵景をふたたび、未来の、⾒知らぬ誰かに向けてローングパス!!

1948年、青森県生まれ。1972年、法政大学工学部建築学科卒業。1980年に株式会社ぷらん・にじゅういちを設立。1990年代には台形集成材を使用する一連の木造住宅「台形集成材の家」を設計。一貫して国産材を使用する現代型木造住宅の設計を続け、建築雑誌へ木造住宅についての論考を多数発表。国産材の開発と普及に努める。2007年以降は「町の工務店ネット」と共同で、日本の町家建築に学んだスタンダードな木造住宅を目指す「現代町家」シリーズに取り組んでいる。