一日で家が姿を現す上棟 – 4棟が建ち上がる瞬間の記録

木造住宅が建つまでの過程で、「上棟(じょうとう)」という工程があります。地鎮祭で工事の安全を祈願し、基礎工事で建物の土台が築かれた後、建物の骨組みが一気に組み上げられる作業のことです。瞬く間に躯体の全貌が姿を現す工程は、まさに家づくりのハイライトと言える、特別な瞬間です。ここでは、建築における上棟の意味と魅力、そしてsun-kyo立山利田に建つ4棟の上棟の様子を写真とともにご紹介します。
上棟 - 平面から確かな立体へ
上棟とは、木造住宅の骨格となる柱、梁、そして屋根の最も高い位置にある棟木(むなぎ)を取り付け、建物の躯体を完成させる工程を指します。地域によっては、作業範囲や意味合いが少し異なったり、「棟上げ(むねあげ)」や「建前(たてまえ)」という呼び方の違いもありますが、日本の伝統的な木造在来工法において、「家が生まれる」工程とも言えるでしょう。

上棟は通常、一日から長くても数日間で集中的に行われます。更地だった敷地に基礎が築かれ、その上に一本一本の柱が立ち、堅固な梁が渡され、そして棟木が取り付けられる。それまで頭の中で描いていた建物のイメージが、目の前で実寸のスケール感を持って、確かな姿として現れる瞬間です。
平面的な設計図から、見る見るうちに立体的な家が立ち上がっていく様子は、施主様にとっても、そして建築に携わる者にとっても、深い感動と新鮮な喜びをもたらします。上棟を見た施主様からは、「一日で家が建った!」という驚きの声を聞くことも少なくありません。この瞬間は、家づくりにおける大きな節目であり、関わるすべての人々の記憶に深く刻まれます。
技術と連携で組み上げる信頼の骨格

上棟は、単に木材を積み重ねる作業ではありません。そこには、大工をはじめとする熟練の職人たちが培ってきた技術と経験が、惜しみなく注ぎ込まれています。寸分の狂いも許されない正確な墨付け。木材一つひとつの特性を見極めた精巧な加工。構造計算に基づいた確実な接合。そして、高所での安全かつ迅速な組み立て。
普段は各自の持ち場で作業を進めるところ、この日ばかりは10人近くもの大工が一堂に会し、連携しながら一気に骨組みを完成させます。この連携と集中力こそが、まるで魔法のように家を立ち上がらせるスピードを生み出し、上棟を見た人々の記憶に深く刻む特別なイベントにするのでしょう。
上棟日までに準備を重ねてきたすべての工程、そして現場での徹底した安全管理体制があってこそ、家に住む人々を何十年と守り続けるために強く、信頼できる骨格が築き上げられます。この骨格こそが、未来の暮らしを支える揺るぎない基盤となるのです。
写真で追う上棟の記録
ここからは、sun-kyo立山利田に建つ4棟の家、それぞれの上棟の様子を写真とともにご紹介します。
- クロガネモチの家

2024年12月2日、sun-kyo立山利田における記念すべき1棟目の上棟が行われました。


息の合った大工たちの連携作業により、瞬く間に家の骨格が組み上げられていく様子が印象的でした。
- イヌシデの家

2025年2月12日。まだ雪が深く残る立山町の冬景色の中で、イヌシデの家の上棟が始まりました。



2月の富山県は、時に厳しい降雪に見舞われますが、職人たちの手際のよい連携で、あっという間に屋根材が張り終えられました。安全に、そして確実に作業を進めるプロの技が光る一日でした。
- タイサンボクの家

2025年2月15日の上棟日は、澄み切った晴天に恵まれました。屋根からは、峰の輪郭がくっきりと浮かび上がる雄大な立山連峰を望むことができ、気持ちのいい景色の中で作業が進められました。



タイサンボクの家のシンボルといえる螺旋階段も、この日に設置されました。トラックで現場に運び込まれ、複数人で慎重かつ正確に、そして迅速に設置作業が進められていく様子は、まさに職人技の結晶でした。
- エノキの家

2025年2月27日、sun-kyo立山利田で最後の1棟となるエノキの家が上棟されました。


2枚の写真は、上棟日より前に行われた「土台伏せ」の様子です。
土台伏せとは、基礎工事完了後、建物の土台となる木材を基礎の上に組み、しっかりと固定する重要な工程。住宅の最も下部を支える木材であり、柱からの荷重を基礎に伝え、建物の耐久性や安全性を高めるための非常に大切な作業です。

上棟という大きな節目を越えることで、漠然としていた「家を建てる」という計画は、「住まい」という具体的な形となり、一気に現実味を帯びてきます。キッチンやダイニングの広さ、リビングから見える景色、そして部屋と部屋を行き来する時の感覚。それらすべてが、確かなスケール感を持って、目の前に立ち現れるのです。
この姿は、家づくりが完成に向けて着実に進んでいる何よりの証でもあります。上棟を終えた建物は、雨風をしのぐ屋根と壁に覆われて、いよいよ内装工事へと進んでいきます。