ストーリー

大工の技と心が宿る – sun-kyo立山利田の家づくり

2025年7月、富山県中新川郡立山町に誕生した、4棟の家からなる「sun-kyo立山利田」。これらの家づくりを手がけたのは、他ならぬMAEKAWAグループの大工たちです。ここでは、彼らの魅力と、3人の自社大工に聞いたsun-kyo立山利田の特徴や、家づくりの過程のお話をお届けします。

sun-kyoを熟知する大工たちの妥協なき家づくり

家づくりにおいて「自社大工」という存在は、お客様に大きな安心を提供します。会社の理念、品質基準、そして自社の建築から培われた独自の技術とノウハウを深く理解し、体現する存在だからです。設計士や監督と密に連携を取り、お客様や設計士からの要望や変更点もスムーズに反映できるため、細やかな対応と柔軟な提案を可能にします。

sun-kyo立山利田の家々を建設したのは、自社大工を中心としたMAEKAWAグループと関わりのある大工たちです。

家が完成した後も、住まう人々が長く安心して暮らせるよう、家のすべてを知り尽くした彼らがアフターサービスに携わっていきます。

「初の試み」が磨き上げる、宮﨑大工の技術と工夫

「イヌシデの家」を担当した宮﨑大工は、このプロジェクトは初めての連続だったと言います。造作が多く、特に苦労したのは、外部の板張り(大和張り)と木製サッシの取り付けだったそうです。

「大和張りは作業量が多い。普段使わないような大きな木製サッシについても、どうやって留めるか、考えながら行った」と話します。ビスが見えないように工夫するなど、仕上がりを見ると細部への配慮が行き届いていることがわかります。

ビスが見えないよう工夫された幕板。職人の隠れた技が光ります。

内部に関しては、「作りものだらけだから、既製品のものはほとんどないんじゃないかな」と話すように、特にキッチンの造作は大変だったと振り返ります。壁のシナベニヤ張りにおいても、素材の特性を見極めて微調整を重ねながらの丁寧な作業が求められました。また、ロフトの床にはJパネルと呼ばれる一発仕上げの床材が使われ、細心の注意を払いながら施工されたそうです。

造作が多い点は4棟とも共通していると言い、普段の家づくりとは一味違うと話してくれました。

前畑大工 難題を乗り越える精緻な仕事術

「クロガネモチの家」を担当し、「イヌシデの家」と「エノキの家」の応援にも入った前畑大工は、「大変だったところはすべて」と、このプロジェクトの難しさを表現します。「自分も監督も、理解しにくい点が多かったから、スムーズに進まなかった場面がいっぱいあったかな」と正直な言葉で語ります。

特にクロガネモチの家では、和室天井に施した円形のくり抜きや造作キッチンが大変だったそうですが、「無事に収まってよかった」という言葉から、完成に対して確かな手応えが感じられたようでした。また、こだわった部分として答えてくれたのは、「シナベニヤを目地なしでぴったりと突き付けた」という、和室の壁です。一見地味ながらも極めて高度な技術を要し、近距離で見ても境目がほとんどわからない壁の仕上げは、まさに大工の熟練の証と言えます。

前畑大工に、大工の醍醐味について尋ねると、「完成した時を見られた時かな。自分が造った家が残るから」と、話してくれました。

ベテラン土井大工が追求する、伝統と革新の融合

大工歴26年のベテラン、土井大工が主に担当したのは「エノキの家」です。土井大工は、その得意とする造作工事、特に和室の造作への情熱を語ります。造作は大変なのではないかと聞くと、「達成感があるからね」と、その醍醐味を表現しました。今回のプロジェクトで苦労したことについては、住宅では初めて施した大和張りが大変だったと振り返ります。

「なるべくクギなどの跡を見せないように、目立たないようにすることを心がけていた」と言う土井大工のこだわりは、エノキの家の細部に表れています。通常は機械で丸く削り出すビスを隠すための埋め木を、手作業でノミを使って四角に削り出し、差し込むように仕上げていると教えてくれました。「昔の大工さんがよくしていた仕事を久々にした。最近やらない和室的な仕事だった」と言います。目を凝らさないと見えないような細部にも手間を掛け、伝統的な技法が現代の家づくりに生かされています。

ビスや目地を隠すため、「エノキの家」の階段に使用された四角の埋め木。木材の色味や木目を合わせ、一見しただけでは気づかないほど精巧に仕上げられています。

テレビボードなど、多数の造作家具についても「目地を隠すように気を付けていた」と話す通り、細かな部分にも徹底して配慮されたことがうかがえます。土井大工は「仕事のポリシーは、明るく楽しく。大変とは思わずに、楽しくやる」とし、長年の仕事に対する姿勢を示しました。

家々に息づく職人の技術と誇り

sun-kyo立山利田の家々は、「明るい」「開放的」「天井が高く、部屋が広い」といった共通の特徴を持っています。また、前畑大工が「外部は板張りと登り梁(のぼりばり)を見せる造りで、軒も深い」と語るように、外観にも統一されたこだわりが見られます。そして、土井大工が言う「木のぬくもりを感じられる」空間は、住まう人々に安らぎを与えてくれることでしょう。

4棟は、それぞれの個性を持ちながらも、共通して大工たちの研ぎ澄まされた技術と、妥協なき仕事への姿勢が反映されています。sun-kyo立山利田は、自社大工が持つ専門知識と経験、そして何よりも「良い家を造りたい」という純粋な情熱の結晶です。彼らの手によって、一棟一棟に魂が吹き込まれ、住まい手にとってかけがえのない価値が創造されています。