雄大な立山連峰と幻想的な散居村 – 立山町の日常にある特別な風景

富山県の東部に位置する立山町。この地に足を踏み入れると、目の前に広がるのは他ではなかなか見ることのできない、息をのむような絶景です。遠くには雄大な「立山連峰」がそびえ立ち、その手前には田んぼの中に家々が点々と散らばる富山県特有の「散居村」が広がっています。
壮大な自然と、そこで営まれる人々の穏やかな暮らしが調和し、日本の原風景を色濃く残すこの場所は、人々の心を捉え、忘れがたい印象を与えます。ここでは、立山町の風景をつくる立山連峰と散居村の魅力と、風景に心を引きつけられた人々のお話をお届けします。
立山町の風景をつくるもの「立山連峰」
「日本の屋根」と称される北アルプス、その北部の山域にあたる立山連峰。大汝山(3,015m)、雄山(3,003m)、富士ノ折立(2,999m)を中心に、標高3,000m級の山々が連なる日本有数の高峰であり、富山県を象徴する自然景観の一つです。富山平野から望む立山連峰は、四季を通じて表情を変え、見る者に尽きることのない感動を与えます。
春には山頂付近に雪が残る峰々と新緑とのコントラストが鮮やかで、夏には力強い緑が山を覆い尽くし、秋には紅葉が山々を彩ります。そして冬には、青空に向かってそびえ立つ白銀の山々が、見事なコントラストを描き出します。
sun-kyo立山利田の近くを流れる常願寺川沿いも、絶景が楽しめる人気スポットです。春には、常願寺川公園の桜並木が数百本のソメイヨシノで淡いピンク色のトンネルをつくり、その奥には雪を抱く立山連峰が堂々とそびえ立ち、息をのむような光景が広がります。青空と白銀の立山連峰、ピンク色に染まる桜並木のコントラストは絵画のようで、多くの人々がその美しさを写真に収めようと国内外から集まり、にぎわいを見せています。
立山町の風景をつくるもの「散居村」
散居村とは、田んぼの中に家が点々と散らばっている集落形態のことをいい、富山県特有の景観の一つ。扇状地の複合からなる平野は水はけが良く、本来は水田の利用に適さない地質です。しかし、富山平野は複数の急流河川が、ミネラルを含む豊富な雪解け水を平地に行き渡らせることで稲作に適した条件がそろい、広大な水田地帯が誕生しました。
その結果、それぞれの農家は扇状地性の土地での農作業を効率的に行うために、所有する田んぼの近くに屋敷林で囲んだ家を建てるようになります。こうして散居村は、富山県の原風景ともいえる農村景観として定着していったのです。

散居村の風景は砺波地方など富山県内各地で広く見られますが、立山町では背景に立山連峰を望む壮大なパノラマと相まって、ひときわ印象的な景観を創り出しています。春の田植え前には水田に水が張られ、立山連峰が水面に映る「逆さ立山」が見られることもあり、写真愛好家の間では隠れた絶景スポットとして注目を集めるようになりました。春から秋にかけては、稲穂が新緑から黄金色へと成長していく稲作風景もまた、心に残る光景です。
立山町に広がる四季折々の風景は、ここに暮らす人々、そして訪れる人々の心を強く引きつけます。
暮らす人、訪れる人のお話
- ご実家の隣に家を建てた人のお話
「実家から見える、剱岳を中心とした立山連峰の景色が大好きで。その景色を楽しめる家を実家の隣に建てました。特に田植え前の風がない日には、水が張られた田んぼの水面に立山連峰がくっきりと映り、その光景は本当にきれいなんです。早朝には、一面の水田が赤色から紫色の神秘的な色合いに染まる日もあって、見慣れた景色でも感動してしまいます」。

- 富山県西部に住む人のお話
「富山県西部から見る立山連峰は、景色の奥に広がるように見えるというか、立山町から見るのとは印象がまったく違うんです。どちらも美しいことに変わりはありませんが、車で立山町へ向かうと山がどんどん迫ってくるように感じられて、その風景には圧倒されます。立山町出身の人から、“山に守られていて、山の恵みを受けて生きている”と何度か聞いたことがありますが、訪れるたびにその意味を深く実感します」。
- 東京に住む建築士 趙さんのお話
「富山駅から車でsun-kyo立山利田へ向かう途中、車窓の外に見えたのは、広大な水田地帯にポツンポツンと屋敷林が点在する光景。風に揺れる稲穂の中に屋敷林が浮かんでいるように見えて、まるでアニメ映画に出てくる天空に浮かぶ城を思わせ、異世界に入り込んだみたいに感じました。その背景にそびえる立山連峰は壮観で、これほど雄大な景色はなかなか他では見られないでしょう」。
- sun-kyoプロジェクトメンバーのお話
イラストレーターの方に依頼した立山連峰の絵を初めて見た時のこと。立山町に住んだことのないプロジェクトメンバーにとって、印象に残る出来事がありました。
「絵を初めて見せてもらった時に、立山町に住むスタッフから『山の形がちょっと違う』という話が出て、山の形を少し修正していただいたんです。私は立山町に住んでいないものの、毎朝職場へ向かいながら立山連峰を見ているはずなのに、話が出るまで形の違いに気がつきませんでした。立山町や上市町に幼少期から住んでいる人は、どの方向から見たら山がどんな形に見えるかを知っているんです。形を熟知するくらい、みなさん立山が好きなのだと感じられました」。

立山町の風景は、立山連峰の大きな存在に見守られながら、人々が自然との関係を大切に暮らしてきたからこそ、富山県らしい日本の原風景が美しく受け継がれてきました。四季折々で異なる表情を見せる、雄大な立山連峰と幻想的な散居村が織りなす風景は、見る者に深い感動や安らぎを与えてくれます。
「立山連峰を背景に、水田が広がる土地に散居する屋敷林のある美しい風景を守っていくこと」
sun-kyoプロジェクトは、世代を超えて人々が大切にしてきたものを継承していくために、この一文をテーマに掲げ、新たな暮らしを創造していきます。